[共同声明] トーマス・バッハIOC会長による 広島・長崎「反核平和」理念の盗用を許さない!

[共同声明]
トーマス・バッハIOC会長による
広島・長崎「反核平和」理念の盗用を許さない!

 米国のメディアで「ぼったくり男爵」と命名されたトーマス・バッハ国際オリンピック委員会(IOC)会長は、日本国と東京都の税収を自分の組織のために略奪するだけでは飽き足らず、核兵器廃絶を求めて苦闘を重ねてきた広島・長崎の被爆者の歴史的念願を、利権にまみれた現代オリンピックの醜い本質を覆い隠すために盗用しようとしています。その目論見のために、7月16日、バッハ会長は広島を、IOC副会長のジョン・コーツは長崎を訪問する予定と報道されています。あまりのことに、私たちの怒りはすでに沸点を超えています。
 この日付の選択については国連が定めた「オリンピック休戦」の開始日に当たるという理由が挙げられています。しかしこの日は、1945年、米国ニューメキシコ州で世界最初の核実験、いわゆるトリニティ実験が行われてから76年目に当たります。この実験の後20日あまりで広島と長崎に対する原爆攻撃が行われ、日本人ばかりでなく、多くの朝鮮人や中国人、台湾人、米兵などの戦争捕虜を含むさまざまな国籍の人々が虐殺されました。犠牲者数50万人を超えるこの空前絶後のジェノサイドの罪を、米国は今日なお認めていません。
 このような日に、中止を求める民意を蹂躙して強行されようとしているオリンピック、「平和の祭典」という仮面がいまや剥がれ落ちたオリンピック、これまで核兵器廃絶になんの関心も示してこなかったオリンピックが、うわべを飾るために広島と長崎に触手を伸ばしています。コロナ下での五輪開催強行を正当化するためにバッハ会長が「核のない平和な世界」のイメージを利用することは被爆者に対する冒涜であり、このような所業は世界の核兵器廃絶運動にとって百害あって一利なしです。批准国が50を超え、今年1月22日に発効した核兵器禁止条約の締結を頑なに拒む日本政府が、IOC幹部の被爆地訪問を歓迎していることがそのなによりの証左です。
 1964年の東京オリンピックのトーチリレー最終走者は、1945年8月6日に広島県三次市で生まれた坂井義則さんでした。しかし、国立競技場の聖火台に彼の手で行われた点火式は、反核平和の力になるどころか、むしろ「原爆の火」を浄化する儀式となって、原子力の平和利用、すなわち原発の時代に道を開く役割を果たしたとさえ言えます。
 今回の東京五輪は当初東日本大震災からの「復興五輪」を理念に掲げていました。しかし、実際には被災者の切実な要求に応える真の復興の妨害以外のなにものでもありません。このメガイベントは安倍前首相の「アンダーコントロール」発言という公然たる嘘によって招致されました。福島原発事故の惨状から国内外の耳目を逸らすことは、最初からこのオリンピック招致の主要な目的のひとつだったのです。3月25日、2020年大会のトーチリレーは福島県浜通りのJヴィレッジから出発し、福島の人々の抗議の声をよそに、放射能汚染が深刻でいまだ帰還者が一人もいない帰還困難区域を通るコースで強行されました。民衆の生命、生活、健康を蔑ろにして国家と資本の意志を押しつける日本政府、東京都、大会組織委員会の独裁的な統治手法は、原発事故からコロナ禍まで同質であり、被爆者の訴えに長年耳を傾けず、民間人の戦争被害に受忍を強いてきた戦後日本国家の政策意志と軌を一にします。
 バッハ会長はあろうことか広島で聖火ランナーを務めることまで考えていたと伝えられます。強い反対の声の前に5月の来日は取りやめになりましたが、開会式まで1週間のこの日、性懲りもなく同じ目的で広島にやってこようとしています。「オリンピック開催のためには誰もが犠牲を払わなければならない」と平然と言ってのける人物、「日本国民が粘り強く逆境を乗り越えてきたことは歴史を通して証明されている」などと甘言を弄して五輪開催の受け入れを迫るこの傲慢な人物に「核のない平和な世界」を語る資格はありません。私たちはバッハ会長、コーツ副会長の被爆地訪問を断固として拒否します。

2021年7月14日

東京五輪の中止を求める広島連絡会(代表:足立修一)
オリンピック災害おことわり連絡会
反五輪の会
バッハ会長〈広島訪問〉の中止を求める有志
ピースリンク広島・呉・岩国念仏者九条の会 備後平和を考える市民の会九条の会・三原ZENKO(平和と民主主義をめざす全国交歓会) 広島環境社会主義研究会
オリンピックに反対する松本の会
子どもの未来を望み見る会
盗聴法に反対する市民連絡会
ピープルズ・プラン研究所 平和をつくる大和市民の会
全国学校事務労働組合連絡会議
ATTAC Japan 首都圏
「バスストップから基地ストップ」の会
学校事務ユニオン東京
学校事務職員労働組合神奈川
憲法・教育基本法改悪に反対する市民連絡会おおいた
ピースサイクルおおいた
Peace Up「9条可視化」の会Workers for Peace
東京にオリンピックはいらないネット
ストップ秘密保護法かながわ
時を見つめる会
個人情報保護条例を活かす会
築地でええじゃないか!かわら版編集部
埼玉学労協
朝霞学校ユニオン
信仰とセクシュアリティを考えるキリスト者の会(ECQA)
靖国・天皇制問題情報センター
「日の丸・君が代」の法制化と強制に反対する神奈川の会
沖縄学校事務労働組合
鎌倉平和学習会
(以上36団体、順不同)